化学療法後の無月経は閉経ではないのか?
化学療法をおこなうと、卵巣機能が障害されて無月経となることがあります。この報告では、化学療法後無月経をきたした45例の患者に、本来であれば閉経状態の乳癌の患者に使用するアロマターゼ阻害剤を投与した結果、その経過中に月経の回復を22.2%に認めています。この結果から化学療法後の無月経状態の患者へのアロマターゼ阻害剤投与には、注意が必要であることが述べられています。
■化学療法による無月経後のAI剤による月経誘発
  対象: 化学療法により無月経となった、40歳以上のER陽性早期乳癌患者45名。Adjuvant療法としてAI剤を投与。
Smith IE, J Clin Oncol 24:2444-2447, 2006
  年齢別月経回復状況
乳癌の化学療法後の無月経の状態から月経回復の状況を年齢別(5歳ごと)に調べました。
39歳以下では全患者で月経が回復し、その中で72%が1年以内に卵巣機能が回復し月経が再開しています。
40歳以上の患者の中では70%が閉経し、50歳以上では全員が閉経しています。一方、月経再開した場合には2〜3年経過して晩期に再開する割合が増え、これは40歳以上の月経が再開した患者のなかで56%を占めていました。
化学療法後のホルモン治療についてはこのような卵巣機能の回復の可能性とその時期を考慮した治療方針が必要となります。
■ 年齢別にみた月経回復状況
  (九州がんセンター,04~07, 86例)